解説:「貸切温泉どっとこむ」
代表 大竹仁一
宿名にあるように、この宿は長野県・蓼科高原にある。 首都圏からもアクセスがよく、中央自動車道で東京から3時間足らずの距離だ。諏訪ICを降りて、茅野市を通り、メルヘン街道を北東の方向、八ヶ岳に向かって登っていくルートのほか、手前の諏訪南ICで降りて原村の牧草地を北上していくのも風景を楽しめる。いずれにしても、高速道路を降りてどんどん進むと標高が上がっていき、気温もどんどん下がっていく。
蓼科高原は、高級別荘地としても有名。 周辺には観光牧場や乗馬クラブも点在しており、夏シーズンには避暑を求めに多くの観光客も訪れる。 また国内屈指の眺望を誇るドライブコース、ビーナスラインの入口ということもあり、人気に拍車をかけているようだ。 冬は高原地であるにも関わらず、雪が少なく、比較的アクセスしやすい場所でもある。
そんな、蓼科高原の中、横谷峡に「たてしな藍」は佇む。
そこは、標高1,150mという場所柄、鳥のさえずりや風の音しか聴こえない静寂が広がる森の中だ。
藍染の暖簾が架かった門をくぐり、カラマツ、白樺などの木々を両脇に見ながら石段を登るとそこが玄関となる。
「非日常」という言葉は、便利で様々な形容の表現として使われるようになったが、都会に住む人間にとっては、ここは正真正銘の「非日常」を肌で感じるであろう。
凛とした冷涼な空気がそうさせるのか、宿の存在感がそうさせるのか、どちらにしても心地いい空間があることは確かだ。
そして、これから始まる時間が、至福であることを確信するのである。
「たてしな藍」の宿泊料金は、2名で泊まって2万円台半ば から。露天風呂付き客室だと3万円台からとなる。 いわゆる高級旅館の部類に入るわけだが、 ゲストもこの宿の装い、佇まい、設えを理解したうえで滞在を楽しんでいる。 この一見何もないように見せて、実は様々な努力と情熱によって現在の宿を創り上げたことを理解してくれた方たちに支持されているようだ。 そういった意味では、この宿はゲストに恵まれている。 いや、ゲストがこの宿を育てているようにも思えるのだ。
全部で17室ある館内の客室は、大きく分けると、スタンダードタイプと露天風呂付きタイプとなり、さらにスタンダードは5つのグレード、露天風呂付きは4つのグレードに分類される。 露天風呂付きタイプは全て1階部分にあり、四季折々の庭を眺めながら湯浴みを楽しめるとあって人気を博している。ベッドルームやダイニングルームを備えた客室もあり、より快適なお籠り滞在ができる。 また、NAタイプ「初月」は、館内で一番広い客室となっており、間取りは踏込み+和室12.5帖+和室6帖+掘りごたつスペース(約4帖)+ウッドテラス。そして花崗岩の客室露天風呂・内風呂・トイレ付き。 大人が2人で入ってもゆったりできる露天風呂での湯浴みは、この上ない贅沢感を味わう事ができた。 スタンダードタイプの客室も、玄関から主室までの空間が広々と取られ、狭さはまったく感じない。特に、新館客室は窓側に掘りごたつも用意され、使い勝手もいい。
家族や小グループで利用するならスタンダードタイプ。 ご夫婦で利用するなら露天風呂付きタイプ・・・となる場合が多いらしいが、この宿の特徴として、記念日利用が多いことがあげられる。
どの客室も、品があって、上質感が漂い、センスの良さを感じる。 そのスペックの高さが、この宿の人気の原動力になっているのだろう。
「たてしな藍」の創業時、料理の担当は現社長の実母 である 丹羽由磯子さんだった。 彼女が生み出したコンセプトは「家庭風懐石料理」。 多くのリピーターを作る要因となった上品、かつ優雅な 献立は、その味とともに現在の料理長にしっかりと引き 継がれている。 旬の山の幸をふんだんに使うことから「山味(やまみ) 料理」 と名付けられた。味はもちろんの事、盛り付けが また見事。 眼で楽しませてくれるという事は、何か得したような気分にもなる。 しかしながら、技術だけに走るのではなく、どこか家庭的な感覚を失わない料理手法は、 少しずつこの宿の料理の評判を上げていった。
2008年3月の改装で、もっとゆっくりと食事を楽しんでもらえる様にと、本館にダイニングルーム併設の客室(Dタイプ)が誕生した。また本館の客室では、基本的にお部屋で夕食をいただけるようにしている。 他の客室は、厨房から離れているため、個室食事処「山味庵」でいただく事になる。
料理内容は、山菜、野菜、魚が中心。 どちらかと言えば中高年向け、もしくはヘルシー志向の方向けだろう。 今まで美味しいものを食べてきた大人たちに支持される、本物の料理がこの宿にはある。
「たてしな藍」の魅力に触れたいなら、宿泊だけでなく 「日帰り」という手もある。 これは、この宿自慢の貸切露天風呂の湯浴みと、 お昼の懐石 を組み合わせたものだ。 この宿の食事は、旬の素材をできる限りの手法で美味しさを引き出し、それにより、自然への感謝、料理人の心意気を感じさせるもの。 その後に、大事な方との温泉浴を貸切で楽しむ贅沢を体感できるわけだから、その幸福感は相当なものだ。
そして、さらに嬉しいサービスが加わった。 それは、上記のシステム(食事+貸切露天)に、「客室ステイ」を組み合わせたもの。 「6時間ステイ」は、11:30~17:30・・・昼食は「昼懐石」。 「9時間ステイ」は、11:30~20:30・・・昼食は「そば御膳」、夕食は「山味懐石料理」。 客室は、日によっては露天風呂付き客室も選べるという。
ちょっとしたドライブでも、どこかで食事をして、どこかで休憩をしたいもの。 この宿に来れば、それがすべて楽しめるというわけだ。 しかも、この極上の癒しの空間を利用して・・・。
四季折々に表情を変えるこの宿は、来訪する季節によって、まったく印象が違ってくる。 その自然の摂理を改めて教えてくれるのが、この宿なのだ。
「たてしな藍」は、業界通の中では「奇跡の宿」と称されている。 それは、避暑目的の夏場だけが強い蓼科という地で、オールシーズン集客できる事は大変難しいことだからだ。 そして、この宿はよくある温泉旅館のように、「温泉」を前面に押し出してセールスしているわけではない。 「温泉も大事だけど、湯治客のように1ヶ月滞在して神経痛を治すならともかく、1泊、2泊の温泉浴じゃ、いくら天下の名湯であっても効果など期待できない。それならば、その短い時間の中で、お客様に満足してもらうには温泉以外何が一番必要か」・・・と、この宿は考えたわけだ。それを突き詰めることにより、結果、「たてしな藍」は、温泉王国と言える信州という激戦区の中で、これほどまでの繁盛旅館にのし上がったのである。
ヒントは、この宿が別荘地に建っているという事。実は「たてしな藍」の常連客は、その別荘オーナーが多いというのだ。自分の別荘があるのになぜ?と思われる方もいるだろうが、別荘とは自宅と違っていつも使っているわけではない。着いたらすぐに窓を開け、空気を入れ替え、掃除を始めるのがルーティンワークとなってしまうのだ。初日はカビ臭くて寝られない → 近くに食事の美味しい「たてしな藍」がある → 予約する・・・こんな具合に別荘客にクチコミで広がっていった。
そして別荘のオーナーの一人は、蓼科に訪れるたびに、この宿を利用するので、別荘を手放したという。そんなエピソードがあるぐらい、この宿には心地いい空間が用意されているという事なのだ。
それがまさにこの宿のコンセプト。 自分の別荘がわりに、この宿を使ってもらおうとの考えなのだ。有名温泉地にある湯宿とは違った、新しい旅の考え方なのかもしれない。宿を自分の別荘として考える・・・「たてしな藍」の成功した要因がこれなのである。
「別荘」のような気軽さと、「湯宿」のような寛ぎ感を同居させている稀有な宿「たてしな藍」。それは「藍染め工房」という、趣味人なら一度は体験したい施設も同居させて、なお一層の輝きを放っている。
お誕生日、結婚記念日、還暦祝・古希のお祝いなど日頃の感謝を込めて・・・大切な人との大切な記念日をたてしな藍がお手伝い致します。
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